2012年2月12日日曜日

小さなイスから教えられること。



私の家には曲げ木のアームチェアが2本ある。
一つは秋田県湯沢にある秋田木工製で、25年くらい前に購入したもので製品No.508。
もう一つは多分ルーマニア製の輸入品で数年前に、格安にてリサイクルショップで購入。
良く似ているが、背と肘の部分が異なる。
そして、製品の細部を見比べると、秋田木工製に軍配があがる。
細部までの加工が実に丁寧。

輸入品の曲げ木アームチェア

秋田木工のNo.508


どちらも、ミヒャエル・トーネットがデザインしたもので、代表的な椅子は肘のないNo.16という小椅子で、
よくカフェで見かける事があると思う。

残念乍ら、No.508のシート部分の籐(ラタン)が痛んでしまった。
修理を依頼するためにずいぶん前の事だが全部外してしまった。忙しくて忘れていたのです。
話しはそれますが、実は他にも籐張りの折り畳み椅子をもっていて、それも同様に破れてしまし、全て外してしまった。それは、ネット状に編んだものを座に貼付けているだけ。
ちょっと見は似ているが全く違う。(実はこの手のものが多い)
No.508と輸入品の2本は座部分に籐の皮を丁寧に編み込んだもので、製品化するにも大変手間がかかるが、日常のメンテナンスも重要で、エアコンなどの乾燥に弱いので、特に冬は時々濡れタオルで拭いたりする事が長持ちさせるコツ。

と言う訳で昨年、秋田木工に連絡し修理を依頼。
残念なことに、籐を編む職人がいなくなり同じ仕様で復元できない事が判明。
そう言えば、このアームチェアはかなり前のことだが、長女がふざけて私が座っているところへぶつかってきた。その拍子に1本の脚に力が加わったのか折れてしまい、秋田木工に送り修理をして頂いた思い出がある。
その時、既に座の籐張りが少し切れかかっていて、秋田木工の方に、もう籐を編む職人がいないので布張りをお勧めしますと言われていた。
それが現実になったのだ。

しかし、この秋田木工製のNo.508は銘品である。
そして、このように修理がまた出来、今後何十年と使用出来るのです。

会社概要を確認したら、大塚家具の100%子会社になったようだ。
大手家具販売会社がメーカーを支え、伝統を受け継ぎ、地方の重要な産業を守っている。

時代が変わっても、次世代に製品を通じて伝統を継承して行くこと。
流行を追うのでなく、毎日の生活に使うものをじっくり丁寧に製造し続け、
修理の対応などで利用者と製品を通してコミュニケーションし続けることができる。
環境という視点から考えると、安かろう、悪かろうは失格。
そして、それは私たち使う側にも責任はあるのだと思う。
小さなイスから教えられた。






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